郷愁の桜

子供の頃には知らなかった。歴史ある立派な名前が付いていることを大人になってから知った。それもその地を離れてから。

小学生時代を過ごした川崎市多摩区の宿河原。立川~川崎間を結ぶ南武線の駅がある。小田急線が交差する隣の登戸は生まれ故郷。登戸と宿河原の中間で多摩川へと流れている二ヶ領用水。吾が住んでいたときには、上流の製紙工場の排水が注がれて赤や青、黄色と毒々しい流れでどぶ川然としていた。そこ頃の多摩川も汚れていて匂いもきつかった。いつしか排水は止まり遊歩道が整備された。両岸には桜の並木道があってちょっとしたお花見スポットになっている。満開になればライトアップされ露天が並び賑わう。ヴェルディとF東の東京ダービーを観戦する前に久しぶりの宿河原。折り畳み自転車で懐かしい界隈を巡ってみた。住んでいた日本板硝子の社宅跡には新しい家が建ち、燐家は廃屋と化していた。更地になっている所も。歳を取れば時代も移り変わる。